花屋バイトが仕事を辞めたいのはどんなとき? 辞める理由は?
花屋さんが仕事を辞めたいと思うとき・辞める理由
花屋さんは、こんな理由で「辞めたい」と思う
管理人は、花屋の仕事を辞めて去っていった人を何人も見てきました。
「辞めたい」という相談は何度も受けました。「辞めちゃおうかな」という愚痴なら、数え切れないほど聞きました。
人から話を聞いただけではありません。自分自身も、何度も辞めようと思ったことがありますし、思った結果、辞めたこともあります。
この記事では、花屋さんが、本気で「辞めよう」と考える理由を、自分が経験したり、実際に見聞したものの中からピックアップしてお伝えしてみようと思います。また、辞めていった人が、残る人たちに説明した理由も挙げてみます(自己申告の理由なので、本当にそうだったのか不明なものもあります)。
それぞれの理由は、花屋ならではのものもありますし、何の仕事にも共通するものもあります。なかなか外に出ないタイプのデータですので、これから花屋さんになりたい人はご参考に。また、現在「辞めようか」と悩んでいる人の役にも立てたら嬉しいです。
心折れると、辞めたくなる
一番多いと思うのは、何らかの理由で心折れてやめる人です。
心折れる理由を挙げてみると、下のようなものがあります。
体力的にきつすぎ、シフトが多く入っているので、それを癒す暇もない
私もこう思って辞めたことがあります。多くの花屋さんが、一回はこの理由で折れそうになっていると思います。それで本当に辞めてしまうとは限らないですが、「辞めようかな」と思うのは当たり前のようにあることだと思われます。
大きく報われることが無い
環境によっては、「報われることなど一つもない」ということも有り得ます。お客さんの笑顔だけでは、つらい業務を帳消しにはできないです。
大して報われることは無いけれども、この仕事から離れて行こうとは思わない人、要するに、花屋業務と根源的に相性の良い人が残っていくのだと思います。
低賃金すぎる
好きで花屋をやってきた人なら、これだけで心折れることは少ないかと思います。ほとんどの人は、低賃金はわかって入ってきていますから。でも、ほかの理由で「つらい」と思ったときに、給料の安さが最後の一撃になって心折れることはあると思います。
強烈に攻撃的なお客さんに当たった
私もこの理由で何回も心折れました。明日にも、この理由で折れるかもしれないです。
でも、私は今のところこの理由で「辞めよう」と思うまでに至ったことはありません。時間をかけても、傷を自分で癒してきました。でも、絶対に癒せないようなことが、明日にもあるかもしれないです。(花屋にとって、とてもリアルな問題です)
大きなミスをしてしまった
店に何十万円もの損をさせたり、大口の顧客を逃がしてしまったりするような、本当の大きなミスは心折れます。
大きな会社ならば、「ミスは仕事で取り返すものだ」という考え方もできますが、小さい店だと、本当にオーナーの家計に打撃が加わったことが目に見えたりして、ポジティブに考えなおすのが難しいことがあります。
劣等感
私も共感できる理由です。私の場合、これで完全にポッキリ折れたことは無いですが、「ダメだなあ」という思いなら、ほぼ毎日あります。
業務の中で生まれる劣等感というのは、たとえば、
「ある時点から仕事が上達しない」
「ミスの数が、人より確実に多い」
「がんばってトライしたことを、お客にも店にも否定される」
「花束を作っても、アレンジを作っても、お客さんから満足の声が聞かれない」
「自分より経験の少ない人が自分よりうまくなっている」etc……
というようなものです。たまに、きちんと仕事ができているのに、本人だけが「ダメだ」と思い込んで、勝手に心折れる人もいます(そういうのも、「弱さ」なんだと思います)。
店の人間関係
花屋でなくても、どこでもあることです。
仕事に、「袋小路感」を覚えた
どの職場にもあることかもしれません。袋小路感とは、行き止まり感と言ってもいいです。
「この先、何も無い。無意味。こんなにキツくて、休みも無くて、給料も安くて、決まりきった業務をこなし、店のためと思って提案しても聞いてももらえない、ずっと袋小路の奥で、足踏みしているだけ……」
人にそれを言えば、そんなのは甘えだと叱られるかもしれません。しかし結局は、トータルで考えて、「今の店で、このような葛藤をする価値は無い」と思った人は出て行くし、「葛藤してでもここに留まろう」と思う人は残っていくだけのように思います。
「思っていたビジョンと違った」
想像していた花屋像と現実が全然違った……という人は多いです。(こちらの記事→花屋さんに向いてる人の性格は? でも解説しています)
しかし、夢のように楽しい想像だけして花屋さんになり、それを少し裏切られたからと言って幻滅して去るような人は、いまだにゼロではありませんが、すでに少数派だと思います。
つらい面もあるのだと理解して入ってきた花屋業界だけれど、それでもなお、「思っていたビジョンと違うので辞めたい」という人が、現在では多いと思います。
何が「思っていたのと違った」のかは、人それぞれだと思います。店の環境、給料、業務の内容など、あるいは全部かもしれません。
健康上の理由
30代以上の花屋さんは、高い確率で首・腰・背中のどこかを傷めています。
そうなる理由の一番大きなものは、重いものを持ち上げたり運んだりする作業が多いことです。また、常に疲れが取れない状態でに力仕事を継続することも大きいです。
「首・腰・背中」を痛めて慢性化した場合、または重症化した場合、業務を続けるのが困難になることがあります。この理由で、本当なら続けたい花屋の仕事から去っていく人は、一定の割合で存在しています。
「首・腰・背中」だけに限らず、私が見たところ、花屋さんで体を壊す人はずいぶん多いと感じます。
理由は、医者ではない私には断定できませんが、肉体労働と、勤務時間の長さ、休みの少なさ、接客ストレス、経営ストレス、夏も冬も寒い店内環境などではないでしょうか。
たまたま私の周りだけがそうなのかもしれませんが、真冬に体を壊して休みはじめ、そのまま帰ってこない……という人が多いように思います。
「とにかく全般的にきつい」
花屋の仕事のつらさ・きつさは、こちらに独立したページを設けています→花屋さんのきつい仕事あるある
花屋のつらさなど、それほど特別なものではないのかもしれません。もっとつらい仕事も、たくさんあるのかもしれません。
ここからは、私の個人的な感触になりますが、何か一つ救いがあれば、もっとマシになるのではないでしょうか。休みは無い、給料は安い、肉体労働で疲れ果てる、というのが「花屋の3大きつい」だと思いますが、これのうちの一つでも緩和されれば、もっと居ついてくれるバイトさんは増えるのにと思います。
つまり、単一の何かがキツいから辞めたいのではなく、「全般的なキツさを緩和するものがないから辞めたい」になるのだと感じます。
本当の意味で、「仕事ができない」人はいる
私は、花屋さんの仕事には、特殊能力は必要ないと思っています。人よりも器用である必要もないし、センスも同様だと思います。どちらかと言うと不器用な人や、センスも普通より悪い、という人でも勤まるものです(私は、自分がそうだと思っています)。
色々な能力が平均より下だと、ほめたたえられる人材になることは難しいですが、一人の花屋さんとして存在すること自体に支障は無いと思います。
しかし稀に、「残念ながら、この人は全く向いていない」ということが、決定的に明らかな人が居ます。
そのような人は、たとえば「花束作成が下手」というような、単一要素が足りないのではありません。下記のようなことが複数あり、改善の気配があまり無い、という人がいるのです。
◆花の種類を区別できない(間違い易い花ではないもので)
◆値段の違う花を混ぜてしまって気が付かない
◆同じこと(難しくない、単純なこと)を、毎日聞いてくる
◆法則性があることなのに、覚えられない
◆「ただの勘違い」が多すぎる
◆店の業務が一時的にストップしてしまう類の失敗を繰り返す
◆良かれと思ってしたことが、たいてい裏目に出る(要するに、花屋としての知識が入っておらず、店の合理性も把握できずに動くからそうなる)
◆なぜか、「わざわざ面倒なやりかた」で仕事をする
◆動きが不合理でバタバタしている
◆「この人の仕事の仕方はちょっと不思議だな」と思って理由を聞いてみると、驚くべき考えを述べることがある
上の箇条書きだけ読むと、「頭の悪い人」という印象ですが、不思議なことには、実際にはほとんどの人が、「この人は、決して球が悪いわけではない」と思える人なのです。また、嫌な人でもありません。
不幸なことに、花屋業務に先天的にマッチしない人なのだろう、と思うしかありません。本人も賢くこの事実に気づくらしく(頭は悪くないので)、「技術・知識に自信が無い」として辞めていきます。
私の見たところ、上の箇条書きのようなことが、何ヶ月たっても改善されないのであれば、辞めたほうが幸せかもしれません。しかし、改善の気配が少しでもある人で、花屋業務を嫌いではない人は、頑張る価値もあると思います。何かをきっかけに、驚くほどスキルアップする人はいるものです。(個人的には、「その人の合理性」と「花屋業務の合理性」が融合するような出来事があればうまくいくようになるはず!と思っています)
また、「その花屋の合理性だけにマッチしない人」の可能性もありますので、花屋業務自体を嫌いでないなら、別の店で働いてみるのも良いと思います。特に、花屋に入るのが夢だったという人なら、一箇所だけ試してあきらめるのはもったいないです。
「向上心」で辞めていく人もたくさんいる
上には悪いようなことばかり書いてきましたが、向上していきたい気持ちで辞める人もたくさんいます。
たとえば、
◆もっと稼ぎたい→給料の高い店に移る
◆自分の好きな業務の多い店で働きたい→たとえば、ブライダルの仕事がしたいから結婚式場付きの花屋に移る、など
◆今よりも格の高い店に移りたい
◆自分の店を持って独立したい
◆花屋の仕事は一時中断して、花の勉強をしたい→スクールに入る、留学するなど
……などの理由があります。
向上心を持って辞めようとするときに、たいていの花屋仲間は、その人の決断を賞賛するものです。
しかし、向上心のある人は、店の大きな戦力であることも多いので、オーナーを説得するのに苦労することがあります。引き止められて、給料アップを持ちかけられるようなことがあれば、その金額が自分の向上心を上回るものだったら、辞めずに踏みとどまっても良いでしょう。
どうしても、その店ではできないことをしたくて飛び立とうと思うなら、その思いを正直に話して説得してみてください。
【実例】辞めていった人たちの申告した「理由」
私が今までに実際に一緒に仕事をしていた人たちの退職理由を、下に列記してみます。
中には、きれいにやめるためのウソがいくつか入っているのだろうと思います。人間関係で辞めた人も何人か見ましたが、公表される理由が「人間関係」だったためしはありませんでした。
「正社員として就職したい」
「子供ができた」
「実家の仕事を手伝うため」
「自分の店を持ちたい」
「医者に肉体労働を止められた」
「家族にバイトをやめろと言われた」
「結婚して主婦になるため」
「花の仕事には向かないようだ」
「この店には向かないようだ」
「仕事がつらくて、続ていけると思えない」
「遠距離通勤に耐えられなくなった」
「実家(地方)に帰ります」
「もっと稼げる仕事をしたい」
花屋は、「なりたい職業」であり、「辞めたい職業」でもある
私は長年花業界で生きてきましたが、花屋というものは、「なりたい相談」も「辞めたい相談」もずいぶん多いと感じます。
なりたいのは、それだけ魅力的に見える仕事だからでしょうし、辞めたいのは、魅力的に見えるわりにつらくて見返りが少ないからでしょう。
店から人が一人いなくなるとき、残った人間たちは、ふと空虚な気持ちになります。自分は、なぜ辞めないんだろうと思うことさえあります。
でも、私は今日まで残ってきました。私にとっては、花業界が迎え入れてくれたことは、幸せなことだったと思います。昔就いていた、もっと稼げる仕事を続けるよりも、花屋業務を始めたのが幸せだったと言えます。
「結局、花屋になって良かった」と思う私のような人間が、「そんな私でも、やめたい人の気持ちに大きな共感を覚える」のが花業界なのです。決して気楽な仕事ではありません。
「辞める・辞めない」の話は、花屋の裏では、日々繰り返されている日常会話です。