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花の先生がもらうかもしれないクレーム


花の先生がもらうかもしれないクレーム

花の先生がもらうかもしれないクレームとは?

花の先生は、いわゆるクレーマーに悩まされることはあまりありません。しかし、皆無とは言えません。

そして、正当なクレーマーというか、
「こういうことは困ります」
とハッキリ言われたり、
「こういう風に改善できないでしょうか」
とやんわり言われたりすることが無いではありません。
そのような「苦言」「ご意見」にどんなものがあるのか、書いてみます。

 

生徒さんからのクレーム

花の先生に対して、生徒さんがはっきりと「苦情をいいます!」という姿勢でものを言ってくることはあまりないです。改善してほしいことや疑問に思っていることがあるときには、

「〇〇は、○○してもらえないでしょうか」
とか、
「なぜ〇〇なのでしょうか」

というような、やわらかい言い方をする人がほとんどです。いわゆるクレーマー的なクレームは、皆無に近いと言って良いかと思います。
下に挙げている例も、攻撃的な言い方で伝えられることは、そうはありません。
(軽いものから挙げていきます)

「花が良くない」

これは、厳密にいうと花屋さんへのクレームです。
「花が持たなかった」
「花が傷んでいる」
などのように、商品の状態についてのクレームのほかに、
「最近同じ枝ものしか入ってこない」
「いつも似たような花しか入らない」
という、種類の乏しさを言われることもあります。

品物が良くなかった場合は、花屋の不手際ですが、先生としても
「申し訳ない」
と生徒さんに言う方が良いです。そして、
「花屋さんによく言っておきます」
と言い、実際に花屋さんに伝えましょう。面倒がって「まあいいや、生徒さんには謝ったから」で済ませるのは良くありません。

種類が乏しいので改善してほしい、という意見には、先生自身もそれに同意できるなら、これも花屋さんに伝えましょう。先生の目から見て「そうでもないんじゃないか?」と思われるときには、様子見で良いでしょう。

「ライセンス=免状が来るのが遅い」

これは、本当はライセンス=免状を出す組織に言うべきことです。
花のスクールや流派は、事務仕事がずいぶんのんびりしていることがあり(非営利の団体はそれが顕著)、一般のサービス業のスピード感になれた人には、
「忘れられているのではないか?」
「書類に不備でもあったのだろうか」
などの思いをいだかせるようなことも起こります。

しかし、ライセンスの申請を何回かした先生には、自分の所属組織のスピード感がわかっていると思います。たとえば、先生自身の感覚で「半年はかかるな」と思ったら、生徒さんにはそのくらいかかると説明し、「そういうものだ」ということをわかってもらいましょう。

但し、もしもライセンスを出す組織の側の不手際で自分の生徒さんが長期間待たされることになったら、生徒さんに代わって、組織に一言いうべきでしょう。

「ライセンス=免状申請のペースが遅い」

「〇ヶ月くらいでライセンスが取れると言ったのに、なぜ〇ヶ月たっても申請してくれないんですか」
「一緒に習い始めた〇〇さんにはライセンスの申請をしてくれたのに、なぜ私はまだなんですか」
というようなクレームです。
(この質問は、言うのに勇気が要ります。生徒さんも思い切って口に出したのだということを汲んであげましょう)

ほとんどの先生は、ライセンスを取りたい希望を持っている人には、ライセンスの申請をしてあげたいと思っているものです。なので、申請しないにはそれなりに理由があるのが普通です。

「この技量では、まだまだ無理」
「簡単なテストをしてみたら、全然知識が身についていない」
「〇ヶ月で必ず取れると言ってしまったけど、それから休みが多くなり、思っていたペースで学習できていない」
などなど、なんらかの理由があると思います。
本人にストレートに言える理由なら、言ってあげてください。過去に「必ず〇ヶ月で取れる」と言ってしまっていたら、「そのときの状況では、〇ヶ月で取れることに疑いが無かった」のだと説明しましょう。
言いにくいことが理由だったら(例えば、「全然上達が見られないから」など)、それを何と言うべきか、先生としてよく考えましょう。ただただ楽しみのため、癒しのために通ってきてくれている生徒さんには、言い方を選ぶべきときもあります。

上記のようなことではなく、先生の管理ミスでライセンスの申請を見送らせてしまっていたら、これはすぐに申請してあげましょう。

各種資格や試験は、年に一回しかチャンスが無いものもあります。それを見送らせてしまうことがあれば、謝罪しなければならないと思って、管理をきちんとしておきましょう。

「あれもこれも無いんですか」

(↑気軽に言う場合と、かなりがっかりして言う場合があります)

生徒さんは、レッスン用のテキストに載っているような道具・資材がすべて、どこの教室にもあるものと思っていることがあります。しかし、実際には(個人教室は特に)、何もかもすべてそろっている教室は少ないです。
例えば、いけばなの流派が販売している花器を、その流の先生全員が持っているわけではありません。しかし生徒さんは、「流の公式花器なら当然あるだろう」と思って、
「えー、無いんですか?」
という言い方をすることがあります。

また、生徒さんは、そのときの自分にとって「あるととても都合が良いもの」を当然のように求めてきて、無いとわかると不満を口にする、ということもあります。
「18番のワイヤーください」
「ごめんなさい、20番~26番しかありません」
「えー、無いんですか」
というようなことです。

あれもこれも、理想としては全部そろっているのが良いには違いありません。しかし、求められたものを全部買いそろえるべきとも言えません。無ければない中で考えるのも勉強だと思えるときには、そう説明しましょう。

もし、特定のものを求める声が多数聞かれるなら、それは教室としてそろえておくことを検討する価値が十分あります。買っておいた方が良いと思ったら、生徒さんには
「今度買っておきますね」
と言いましょう。
また、当然あるべきものが無いのであれば、それは「不便をかけて申し訳ない」と思わなければいけません。その教室に最低限必要なものを「あれもこれも無い」と言われないようにしましょう。

「設備の使い勝手が悪い」

設備の使い勝手とは、例えば些細なことから書きますと、
「物入れの蓋が固い」
「撮影バックが汚れている」
などから、
改善しようとすると大きなコストがかかるような、
「机やいすの高さが合わない」
「水屋の入り口が狭くて片付け時に人が渋滞する」
などのことです。

(こういうことは、はっきり言ってもらえる空気があるのが健全なお教室です。先生は、レッスンする人間と全く同じ動作を教室でしないものなので、生徒さんが全員気づくことを、言ってもらわないと気が付かないことが意外とあります)

設備関連は、使いにくくてもそれを改善できない場合があるので、そういう時には、
「不便で申し訳ない」
ということは言いましょう。
物を買いかえたり、何かの工夫を加えれば簡単に改善できるものは改善しましょう。そのときに、教室からの収益に見合わないコストがかかるなら、無理に改善しなくても良いでしょう。

大きなお金のかかる改善は、教室と自分の未来のために有益だと思えるなら検討しましょう。

「前の先生と教え方が違う」

カルチャーセンターの講座や、会社・学校などの華道部を人から引き継いだときに、このような声が出ることがあります。正直、これを言われる先生はつらいです。「慣れ親しんだ前の先生とは違うなあ」と言われているのですから。

もしも、生徒さんの言う「前とは違う」に、「変えられてしまった」という反発の気持ちが混じっていると思ったら、その教室が持っている空気・慣習のようなものは、急激には変えずに守ってあげて、自分のカラーに染めるのは急がずに徐々に進めましょう。
「前と違う」ことが、先生の個性にかかわるものである場合、完全に前任の先生と同じ教室であり続けることはほぼ不可能です。先生が変わるということは、そういうことなのです。

技術指導が「前の先生と違う」と言われたら、何がどう違うのかを確かめましょう。
技術指導の方法は一つではありません。Aの方法を取る先生と、Bの方法を取る先生がいて良いのです。前任者がAで、後任の自分がBだった場合、急にBに変えない方が良いと思ったら、Aの方法を継承することを考えましょう。ただし、生徒さんのために、少しの戸惑いがあっても「Bの方が絶対的に良い」と思うなら、自分の考えられる最良のやり方でBの方法に導きましょう。

技術指導で一番困るのは、前任者が誤った指導をしていた場合です。
作業の順序や、素材の扱い方で、はっきりと「間違ったやり方」で教えている先生は、現実に存在します。この場合、
「このやり方は、ダメなんですよ」
とは、いかに自分が正しくても言わない方が良いです。前任の先生を全否定して、良い結果になることはあまりありません。別のやり方でやってみましょうと提案し、間違った方法を正しい方法で上書きしてもらいましょう。
「だって、前の先生はこうやっていたのに」
と、反論してくる生徒さんがいたら、自分の技術指導が間違っていないことの根拠となるもの(テキストなど)を示して、少なくとも自分がおかしな指導をしようとしているわけではないことをわかってもらいましょう。

「前の先生と違う」と言われたときに、後任の先生としては、
「いかに生徒さんを混乱させずに、正しい知識・技術を伝えるか」
を第一に考えて対処しましょう。


 

近隣からのクレーム

「うるさい」

花の教室で、近所から「うるさい」と怒られることはあまりありません。
あるとすれば、教室の行きかえりの生徒さんのおしゃべりがうるさいとか、特殊なことをしたときに、作業音がうるさいと言われる場合です。

おしゃべりの方は(こんなことを言われることは滅多にないですが)、生徒さんたちに「迷惑にならないようにしてください」と言えば済みます。

作業音の方は、例えば釘打ち、ビス打ち、電動工具の使用など、特殊なことをしたときに限られると思います。本来花の教室は、どちらかと言えば静かにレッスンできるジャンルなのです。
大きな音がするとわかっていることは、周囲の迷惑にならないかどうか、あらかじめよく考えてから実施しましょう。もし、大丈夫と思ったのにクレームをもらってしまったら、教室の主催者として謝らなければなりません。

「人の出入りが多い」

このクレームは、一軒家で受けることは無く、賃貸物件で自宅教室を開いている場合に、同じ建物の住人の間から出てくる可能性があるものです。

このクレームの主旨は、
「不自然な人の出入りがある。おかしなことをしている家なんじゃないのか?」
「マンション内に、勝手に不特定多数の人を出入りさせている家があるのは困る」
というようなことだと思います。

不審なことなどしていない、ただの花の教室です、ということは、はっきり言えばわかってもらえるはずです。
困るのは、「住居」として借りていて、しかも住居使用以外は認められていない物件の際に、
「花の教室は事業ではないですか? 業として部屋を使うことは規則違反です」
と言われた場合です。
このようなときに、正式に管理会社や大家さんも含めて話し合えば、花の個人教室くらいは認めてもらえることの方が多いと思われます。
話し合って、もしも認めてもらえなかったら、そのときには、
「賃貸住宅の一室で納められる規模ではなくなったんだな」
と思って、外部に教室を探し始めるのが良いと思います。または、(花の教室のためにそこまでする気持ちがあればですが)住居としても、教室としても使用してかまわない物件に、引っ越せば問題は無くなります。


 

出稽古先からのクレーム

自宅外に借りたり、カルチャー教室、会社や学校の華道部に出向いている場合に受けるかもしれないクレームです。

「うるさい」

上の項の「うるさい」を参照ください。

「教室をきれいに使ってください」

場所に慣れてきたり、生徒数が増えてくるともらいがちなクレームです。
教室内も、トイレや廊下などのスペースもきれいに使うことを心がけましょう。
先生自身だけでなく、生徒さんにも汚さない、散らかさないことは徹底させます。きれいにすることを習慣にして、汚く使うことに罪悪感を生ませる環境を作ると良いです。

たいていの花の教室は、器や道具などを置かせてもらっていると思いますが、そういう場所は、埃の温床になりやすいです。定期的に大掃除をすると良いでしょう。

水を使うことのある教室(フラワーアレンジメント、いけばな、ガーデニングetc)は、床などをびしょびしょにして帰らないように気を付けましょう。会場の管理者が目に余ると思ったら、使用禁止を言い渡されることもあり得ます。

「物が多すぎる」

特に、いけばな教室が気を付けるべきことです。
いけばなは、本格的になるほど道具やストック材が増えますし、花器の大きさ・形を増やしていったらきりがありません。特に花器は、重ねることができないものが多く、遠慮なく会場に置かせてもらっていると、いつか他のスペースを圧迫していきます。

同じ教室を他の講座も使っている場所では、
「花の教室だけがあんなにスペースをもらっていてズルい」
という不満が出てくることもあります。

あらかじめ教室の管理者と、どこまで使って良いのか、どんなものでも置いて良いのか、などを確認しておきましょう。
もしも、許されているスペースにどうしてもおさまらなくなったら、「そのためのお金を払うので、物置スペースを確保させてくれないか」という交渉をしてみることを考えましょう。


 

花屋からのクレーム

花屋からすると、花の先生はお客さんなので、基本的にはクレーマー的な対応はありません。が、「お願い」や「指摘」を強く言われることはあります。

「注文が細かすぎる」「注文が非現実的」

花の教室では、花材の種類や状態に、いろいろと指定をすることがあります。この指定をガチガチに厳しくして、しかもごく安い値段で少数だけ入れさせようとすると、花屋から悲鳴が上がることがあります。
自分の注文が、常識の範囲にあるかどうか考えてください。ほかの花屋がやってくれていたからと言って、別の花屋もやってくれるとは限りません。花屋の売り上げ、市場との取引の大きさ、マンパワーによっては、A店には簡単にできても、B店には到底無理なこともあります。

もし、十分常識の範囲なのに文句を言ってくる花屋であれば、別の花屋を開拓することを考えても良いでしょう。

花屋から、攻撃的なクレームを受けたら

もし、本当に攻撃的な言い方をされたときは、向こうが喧嘩するつもりで来ているとき、つまり、納品をやめてもかまわないと思っているときです。こっちからも取引はお断りだ、と思うなら、そのまま絶縁してもいいでしょうが、相手花屋との関係を切りたくないときは、冷静に対応し、自分に非があれば認めてあらためましょう。
何の非も無いのに一方的に文句を言われたら、花屋の側が怒っている核心が何なのか見極め、終始冷静にふるまって、ことの最善の着地点を見つけましょう。自分が悪くないのに謝るようなことはするべきではありません。
言いがかりに、のせられてはいけません。重要なのは、どんなに頭に来ても、自分が後悔するような態度を取らないことです。



 

生徒の父兄からのクレーム

生徒が子供さんの場合、その父兄からクレームが出ることがあります。内容としては、生徒さんからのクレームとほぼ変わらないと思って良いです。基本的に父兄からのクレームは、「わが子が当然得られるはずのものが得られない」と感じられたときに出てきます。

今のところ、花の教室にモンスターペアレンツはあまり存在しないようです。理由は、私は専門家でないので分かりませんが、個人的には、
「モンスターペアレンツになる人の思想として、花の教室では先生との関係を良好にしておく方が自分たちの利益が大きいのだろう、と考えているのでは?」
と想像しています。

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