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お花の先生の収入を試算してみる


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お花の先生、フラワー教室の先生の収入を試算してみよう

花の教室の先生は、一昔前までは、小遣い稼ぎ程度の収入にはなるものでした。
しかし、現在では、なかなか小遣い稼ぎにもなりません。現実問題として、各流派・スクールの中で少しは名を知られているくらいの先生でも、花のレッスンで儲けている人は数えるほどかと思います。

では、お花の先生の収入はどのくらいなのか?というところを試算してみました。これからお花の先生になろうという方は、参考にしてみてください。
ちなみに、管理人自身は、花の先生業を本業にすることは、どなたにもお勧めはしません。趣味として楽しむ方が、明らかに現実的です。

「本業にはしなくていい。ほとんどの人は花では生活できない。運よく生活できるようになっても、金持ちにはなれない」これが、私の心からのアドバイスです。

 

まずは、単純な試算をしてみます

花の教室には、いろいろな収入のパターンがあります。その中でも、一番単純なもの=「自宅でレッスン料を取って教えている」で年収を試算をしてみましょう。
現時点(2021年現在)で平均的と思われる月謝6,000円(東京値段です。地方はもっと安いところもあります)で算出します。

生徒数5人だと年収は……6,000(月謝)×5(生徒数)×12(ヶ月)=360,000円

生徒数10人だと年収は……6,000(月謝)×10(生徒数)×12(ヶ月)=720,000円

生徒数20人だと年収は……6,000(月謝)×20(生徒数)×12(ヶ月)=1,440,000円

場所代や水道・光熱費などを考慮に入れずに単純に考えると上のようになります。一見、とても実入りが良いと思うかもしれません。
しかし、これは机上の計算です。実際には、20人の生徒を集めるのは大変なことです。いえ、5人も難しいのが現実です。特に都会では、花の先生は飽和状態で、一人でも教えていたら「あの人はよく頑張っている」と言われます。
つまり、花の教室で100万超えの収入は、相当難しく、相当な数のライバルを蹴落とさなければならないということです。

参考までに、上のような単純計算で、世の「平均年収」と肩を並べるには何人の生徒数が必要なのか計算してみましょう。

2020年の二十代の平均年収は、国税庁によれば319万円です。319万円にもっとも近い数字を出すための生徒数は、

6,000(月謝)×44(生徒数)×12(ヶ月)=3,168,000円

↑44人ということになりました。
上に、「5人も難しいのが現実」と書いてあることを踏まえ、44人がどういう数字なのかを考えてみてください。


 

月謝が1000円違ったら、年収は大いに違う

上の項では「月謝6,000円」で計算しましたが、この数字を変えると、年収もかなり変わります。
たとえば1000円安い「月謝5,000円」で10人教えているとすると、

5,000(月謝)×10(生徒数)×12(ヶ月)=600,000円

6,000円の月謝の教室と比べると、12万円少ない年収です。
反対に、6,000円より高く、たとえば「月謝7,000円」で運営すると、

7,000(月謝)×10(生徒数)×12(ヶ月)=840,000円

6,000円の月謝の教室と比べると、12万円多い年収です。
月謝5,000円にした先生と、月謝7,000円にした先生とでは、年収に240,000円の差がつきます。

お月謝は、先生自身が運営している教室なら、先生自身が決めます(カルチャーセンターのように、運営元がほかにある場合は別)。つまり、先生が全く個人の感覚で決められるものなのでして、確たる根拠もなく漠然と「このくらいでどうだろうか」と決める人は少なくありません。
そうやって、漠然と「3,000円」にした先生と、漠然と「6,000円」にした先生では、収入が2倍も違ってきます。「なんとなく」で2倍の差になるのです。

それなら高く値段設定すればいいのかと言えば、そう単純なことでもなく、高額なために入門者が集まらなければ、安い月謝の方が年収が上になるかもしれませので、適正なお月謝の額は、個々に見極める必要があります。


 

場所代がかかるかどうかで収入は大いに違う

上の項までは、「自宅で教え、教室からは入ってくるお金だけがあり、出て行くお金はない」ものとして試算しました。
しかし、実際には多くの教室が、会場を押さえるための経費をかけて運営されています。貸しスペースを借りている先生もいれば、教室用にマンションの一室を持っている先生もいます。

現在の日本で、フラワー教室の運営にかかわる経費でもっとも大きいものは場所代です。ここでは、貸しスペースを借りている場合の試算をしてみます(マンションの一室を所有するよりも一般的だと思うので)。

※東京値段で試算します

貸しスペースの値段は、足で徹底的に探すか、人脈をフル活用して探したとして、「1H 2,000円」程度が底でしょう。東京なら、1H2,000円で見つかれば運が良いです。
1H1,000円は、無いと思ったほうが良く、反対に、高い方向には天井がありません。
(※レンタルスペースの情報を探すと、1H 2,000円を下回る物件は珍しくはありません。しかし、花の教室は、そのような場所では運営しにくいです。水を使うことを嫌われたり、道具・資材を置かせてもらえないことがほとんどです。特に、いけばな教室がやりにくいです。プリザーブドフラワー教室なら、「せまい&資材はその都度持ち込み」でもやれる可能性が高いです)

まずは、運よく1時間2,000円のスペースを確保できたものとして試算しましょう。月に三回、一回あたり2時間借りるとして、月当たりにかかる金額は、

2,000(場所代)×2(使用時間)×3(月の使用回数)=12,000円
月謝6,000円の教室なら、二人分の金額が場所代で消えます。月謝5,000円なら、二人分では納まりません。月謝3,000円の教室なら、4人分がかかります。
場所代12,000円を12ヶ月分はらうと、144,000円。この金額を、上の項で計算した年収から引いてみてください。
また、ここでは計算に入れませんでしたが、家から遠い場所だと交通費がかかります。生徒数が少ないと、交通費程度でも教室の経済を圧迫します。

上の試算から、出ていく金額を減らすことを考えるなら、場所代のもっと安いところを探すか(難しいと思います)、使用時間を減らすか、月の使用回数を減らすか、しかありません。
使用時間を1時間に減らすのは、非常に厳しいです。よほど時間の配分を考えて効率的に動かないと、実質、30分程度の稽古しかできなくなってしまいそうです。月の使用回数を減らすのは、月謝の金額が抑えられることにつながる可能性がありますので、うまく月謝と場所代のバランスをとる必要があります。

場所代は、「一時間ごと」の計算ではないところもたくさんありますので、上の試算は一つの例です。

私が今まで見てきたところ、大体どんな料金体系でも、「生徒さん数人分の月謝は場所代で消える」と考えた方が良いです。つまり、5~6人教えているのではほぼ儲けにならず、10人超えてやっと「小遣い銭」程度になってくる感覚かと思います。

そして、業界の外の人には、あまり信じてもらえないのですが、場所代で赤字の教室を運営している先生は、結構な数で存在しています。
赤字でやめない理由は、

「いつか黒字にしたいと頑張っている」
「生きがいである教室を閉めることなどできない」
「人に教室をつぶしたと言われたくない」
「教室運営は楽しみであり、もともと採算は考えてない」

などなど、色々です。
私自身、若い頃に、月によっては赤字、トータルでプラスマイナス0くらいだった教室運営をやめなかった理由は、「指導しているという事実を手放したくなかった」というのが正直なところでした。


 

支出を抑える工夫をするべき

会社や店舗の経営で、一番お金がかかるのが、場所代と人件費です。
花の教室の場合、助手や事務員が必要になるのは相当大きな教室になってからですので、人件費は最初は考えなくてもいいと思いますが、もしも「助手・事務員を頼もう」と思うなら、本当に居ないと困るような状況が発生してからで良いでしょう。小さな花の教室は、支出を抑えていくことを考えないと、いつか経営に無理が生じます。

場所代が教室の経済を圧迫するのは、上の項にも書きました。可能であれば、場所代をかけずに運営することを考えましょう。
教室が小さいうちは、自宅の一室や、家族・親戚の家で空いている部屋を頼んで使わせてもらうなどすれば、場所代はゼロにすることも可能です。
教室が大きくなってきたら、花屋の二階を無料で借りることも、不可能ではなくなります。また、思い切って、カルチャーセンターに営業をかけ、「自分の教室の生徒を〇〇人連れていくので、カルチャーに入らせて」と交渉し、カルチャーの一講座に移動させれば、これも場所代はゼロになります。


 

雇われ講師……カルチャー講師の年収を試算

上の項でカルチャーセンターの講座に触れたので、カルチャーで教える先生など、講師として招かれて収入をもらうタイプの先生の年収も試算してみます。

カルチャー講師の収入は、各カルチャーセンターにより異なりますが、業界標準で、受講料の3~4割くらいと言われています。(固定給のカルチャー講師は聞いたことが無いので、多分いないのだろうと思います)
受講料は、各カルチャーセンター・各講座でかなり異なります。月1レッスンの講座もあれば、月4レッスンの講座もありますし、講座の「格」もあるので試算するのが難しいのですが、いくつかの値段設定で、生徒は10人、受講料の35%が収入になるものとして、まずは月収を試算してみましょう。

2,000(レッスン料)×10(生徒数)×0.35=7,000円
これを年収にすると、7,000×12ヶ月で、84,000円。当然、これでは生活できませんが、月のレッスン料が2,000円というのは、月1レッスンの金額と考えられるので、年間12日の稼動ならこれで当然です。
月のレッスン料が、5,000円だとすると、下のようになります。

5,000(レッスン料)×10(生徒数)×0.35=17,500円
これを年収にすると、17,500×12ヶ月で、210,000円。やっと6桁の、収入らしい数字になってきましたが、まだ生活できる金額ではありません。

10,000円(レッスン料)×10(生徒数)×0.35=35,000円
年収にすると、35,000×12ヶ月で、420,000円。レッスン料が10,000円の大台に乗って、やっとこの金額。月々で見ればお小遣いレベルの金額です。

厚労省によれば、2020年大卒の初任給の平均は、226,000円とのことです。この金額を、カルチャーの10,000円レッスンで稼ごうと思うと、下のような生徒数が必要です。

10,000円(レッスン料)×65(生徒数)×0.35=227,500円
なんと、65人もの生徒数が必要です。この数字は、私はリアルに知っているカルチャーセンターでは1か所も無いです。月に10,000円でこの数字なので、もっと安い月謝であれば、さらに多くの生徒を集めないと達成できません。
1か所に大勢が難しいならば、10人集まるカルチャーを5~6箇所持てばいいのではないか、という考えもあるでしょうが、週の曜日のほとんどをカルチャーで抑えられている先生など、私は会ったことありません。つまり、カルチャー講座を多数担当することは難しいのです。それに、カルチャーといえども、最近は10人すら集めるのは困難でしょう。

思っているほど、カルチャー講師の実入りは良いわけではないことがお分かりでしょう。カルチャー講師だけで暮らしていける花の先生は、全国で一人もいないかもしれないと私は思います。
それでも、カルチャーセンターに入りたいと思っている先生はたくさんいて、それは、

「場所代がかからない」
「基本的に、運営上の支出は無い」
「個人では打てないレベルの宣伝を、カルチャーセンターがしてくれる」
「肩書きとして、悪くない」

などの理由からです。


 

雇われ講師……部活・サークルの講師

部活やサークルに招かれて教えるという講師のスタイルもあります。
しっかりとした収入にすることを考えるなら、会社や学校の部活・サークルで継続的に教えるほうがいいです。単発の講座に招かれるのも悪くはないですが、それだと本当にお小遣い程度の収入です。

学校や会社は、どういう計算でギャラを出すかが、個々でかなり違います。
月謝制のところ、部員の数×固定金額で算出しているところ、時給計算しているところ、月額が固定されているところ、年俸制のところまであります。

実は、部活・サークルの講師ギャラに関しては、「このくらい」という標準が読めないので、申し訳ないですが、私には試算ができません。
でも、「部活・サークル講師」だけで生活できるのかといわれれば、「おそらく、できない」と思います。根拠は、
「この会社稽古だけあれば安泰だ」
「この学校の華道部が、私のメイン収入です」
と言っている人(もしくは、言わなくても多分そうなのだろうと推察できる人)を見たことが無いからです。
無根拠の推測でいいなら、「ほとんどの部活・サークル講師収入は、年収としては6桁」と思います。拘束時間と担当する生徒の人数が多い場合は、7桁に届く人もいるでしょう。

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