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花の仕事の確定申告


花の仕事の確定申告

花屋アルバイトと、花の先生の確定申告について

「花の仕事の確定申告」の記事タイトルですが、花屋のアルバイト店員と、花の先生の確定申告に絞ってお伝えします。
主に、確定申告時に困ることや、迷うこと、きちんと申告したいのに思うようにならないときにどうするのか、というところに重点を置いてみました。

(2022年現在)

 

花屋バイトの確定申告……必要な人と、必要無い人がいる

確定申告の要不要は、こちらを見ていただくのが一番良いです→国税庁公式 確定申告が必要な方
基本的には、確定申告しなければならないのは、「店で年末調整を行っていない、年収103万円を超える、副業の所得が20万円を超える、アルバイトの掛け持ちをしている」人です。

確定申告は、素人には面倒な作業です。店で年末調整してもらえれば、アルバイト店員としては一番楽です。


 

花屋バイトの確定申告……申告書提出の流れ

確定申告は、店にお任せではなく、自分で作成して提出します。簡単に提出の流れを書きますと、

【オンライン提出の場合】
源泉徴収票・各種控除の証明書など、必要な書類を入手→オンラインで申告書を入力→オンラインから提出

【紙で提出】
源泉徴収票・各種控除の証明書など、必要な書類を入手→オンラインで用紙のみダウンロードして記入orオンラインで入力までしたものをダウンロードor税務署などで配布している用紙をもらってきて記入→税務署に郵送か持ち込み

確定申告の受け付けは、毎年2月16日~3月15日です(ごく稀に例外アリ)。申告内容がシンプルな場合は、10分くらいでも作成できますので、ギリギリまで着手しなくても大丈夫ですが、申告内容が複雑な場合や、記入するうえの疑問点を持っている場合などは、早め早めに作成に着手しておいた方が良いです。



 

花屋バイトの確定申告……こんなときどうする?

この項では、花屋アルバイトの確定申告で起こりがちな「困ること」の対策を書いてみます。

店が年末調整してくれない

※確定申告ではなく年末調整の困りごとです

本来、店は年末調整をする義務があるのですが、「しない」と言い切る店は少なくありません。
理由は、

必要ないと思い込んでいる……こういう店、結構あります
本当はするべきと知っているが、面倒なのでやらないことにしている。やらなくて大丈夫だろう、今までも大丈夫だったから、などと思っている……こういう店、結構あります
店はあなたを雇っていません、業務委託です。なので、税金のことは自分でやってください、という考え方をしている(要するに税務事務が大きな負担なのでしょう)……ここまできちんと考えて年末調整を回避している店はそんなに多くはありませんが、あることはあります。ほとんどのアルバイトは契約書をかわしていないので、「雇用関係を結んだ覚えはない」と店に言われたらそれまでです

どんな理由であれ、店から、
「自分でやってもらってます。ごめんね」
と言われた店員は、大概何も言えなくなるものです。このような時には、自分で確定申告しましょう。どうしても納得できなければ、店と交渉して何としても年末調整してもらいましょう(税法的には、間違っているのは店の方なのですから)。

源泉徴収票がもらえない場合はどうする?

まず、店は源泉徴収しているのか、していないのか、どちらでしょうか? 分からなければ給料の明細(無ければ支給金額と時給から割り出します)を見てください。時給×稼働時間の金額を満額貰っていたら、「源泉徴収されていない」ことになります。されていないのだから、源泉徴収票は出さない、と店に言われてしまったら、貰った給与の所得税は、自分で確定申告して納めるしかありません。(源泉徴収票は、雇用契約に基づいて給与を支払った雇用主は、税金の徴収の有無にかかわらず発行義務があるので、「徴収してないから出しません」という店の言い分は間違っているのですが、「徴収していない=発行しない」と考えている店はいくらでもあります)(個人商店は源泉徴収などしないもの、と思っている店主も結構います)

給与から源泉徴収されているのに、源泉徴収票を出してくれない店は無いと思いますが、忙しがってなかなか出してくれなかったら、自分から「源泉徴収票はいつ頃貰えますか?」などと聞いてみましょう。

「源泉徴収しておらず、源泉徴収票を出してくれない」店の場合、収入を証明する書類としては、給与明細があれば給与明細を使います。きちんとした書類の給与明細ではなく、例えば封筒に「4月分 1000円×105時間=105,000円」などと書いてあるような場合は、それが証明書類となりますので、封筒を処分せずにとっておきましょう。
金額を書いたものを一切貰っていない場合は、自分で毎回の給与の金額を控えておきましょう。

無断退職した店から源泉徴収票をもらえるのか?

いわゆる「バックレ」た店であっても、税金関連は義務なので、要求すれば源泉徴収票は出してもらえます。無断でいなくなったことを理由に出さない店はありません。マメな大規模店なら、要求されなくても送ってくれるかもしれません。

つまり、この件で問題なのは店の心情ではなく、黙って去った人の側の心情として難しいのであって、バックレた店に連絡なんかできないよ、ということなのでしょう。
なにか訳があって、ぜひとも必要なら店に行くか、電話するか、文書を送るかして要求するしかないですが、多くの場合は、
「源泉徴収されていないので、無くてもなんとかできる」か、
「源泉徴収で多めに納税している金額を取り戻すことをあきらめればよい」
で済みます。自分が上の二つのケースに当てはまらないかどうか確認してみましょう。


 

花の先生の確定申告

※個人の花の先生の場合のみ。法人を立ち上げている場合については解説しません

花の先生は、どこかの企業に所属していない限りは、大半の人は自分で確定申告をしているかと思います。

税理士さんにお任せしている先生もかなりいるはずですが、法人化していない花の先生で、何千万円も売り上げのある人はあまりいないと思うので、「個人で申告書を作成できる規模ではない」ような人は、実際はほんのわずかだと思われます。
しかし、「10万や20万払っても、面倒で分かり難い税金業務を誰かに頼めるならその方が良い」と思えるなら、税理士さんに頼みましょう。あのわずらわしさから解放されます。(税理士さんに渡す書類などをきれいにそろえるのさえも結構煩わしいですが)

自分で確定申告書を作成する人は、作成の流れとしては上の項の「花屋アルバイト」の場合と同じです。大体年があけたくらいから「早めに作成しよう」という意識を持っておいて、「必要書類をそろえる→申告書作成→提出」を行います。

帳簿は、面倒でも入出金があった時に、その都度つけておく方が良いです。家族の中に税金会計に詳しい人、簿記の資格を持っている人などがいたら、協力してもらえるようにすると大変心強くなります。

開業届を出していなくても、個人事業主として確定申告できます。
お小遣い程度の利益しか出ていなくても、税務署の人に相談してしまうと「開業届を出してください」と言われますが、自分の仕事の規模が開業届を出すに値すると思えない場合は出さなくても大丈夫です。


 

花の先生の確定申告……レッスン料の管理は徹底しておけ!

多くの花の先生、特に個人教室の先生は、納税の必要など全くないような収入で教室を始めます。そうすると、レッスン料をほぼ管理していない状態が(管理する必要すらないので)長く続くことがあります。

その習慣をうっかり続けていると、いざ確定申告が必要になったときに、レッスン収入が全くわからなくて困ることになります。
最低限、お小遣い帳のようなものでも良いので、入ってきたレッスン料の金額がわかるような帳簿を作っておきましょう。

理想的なのは、帳簿のほかに、「誰が見ても、この月にこれだけのレッスン料が入ったのだな」とわかるような証拠物体か証拠書類を残すことです。
証拠物体とは、例えば月謝袋のようなものです。
月謝袋は、下のようなものが文房具店で売っていますが、しっかりめの封筒に(薄くて柔らかい封筒でない方が良いです)手書きで「お月謝」などと書いて使うこともできます。

月謝を受け取ったときに、袋に日付を書いて押印しておけば、明確にレッスン料の収入金額が分かります。
月謝制でなく1レッスン制でも、同じように封筒を作って日付記入と押印で管理することはできます。

管理人自身のやり方を書きますと、封筒は使わずに、領収証を作っています。
複写タイプの領収証に、相手の名前をちゃんと書き(上様にはしない)、但し書きを「花代とレッスン料」にして、受け取った金額を記入して生徒さんに渡し、複写を自分の手元に残しています。それだけ見ると、いくらが花代でいくらがレッスン料なのか分かりませんが、私の教室は告知サイトとチラシに、1レッスンの金額が書いてあるので、税務署に求められたらきちんと説明することができます。

要するに、その気になったら本人が勝手なことを書ける帳簿だけではなく、その金額が真実であることを支える証拠を自分と生徒さんの間に残しておけ、ということです。



 

花の先生の確定申告……こんなときどうする?

この項では、花の先生が確定申告するときに、迷うこと、困ることについて書きます。

申告しなければならないラインはどこから?

花の先生専業の場合、税法的には、事業で得た収入から経費を引いた所得が48万円以下であれば、確定申告の義務はありません。
副業として花の先生をしている場合なら、花の収入が20万円を超えなければ、これも必要ありません。

上記の、「専業 48万円」と「副業 20万円」が、申告するべきラインです。
ライン自体ははっきりしていますが、迷うのは、「これも収入に計上するのか?」と思う金額が存在し、その金額を計上するか無視するかで、ラインのどちら側にいるのかが変わる場合でしょう。
例えば、
数人で花の同好会のようなものを作っている、自分は講師料をもらっているが、レッスン帰りのお茶とケーキ代をみんなの分出しているので、ほとんど残らない……これも所得?
数人の希望者にだけ教えていて、教室の存在をオープンにしていない。年に48万円をほんのちょっと超える金額を得ているとは、どこからもわかるはずがない。それでも申告する?
会社員だが、友人数人に教えていて、頼まれて他の教室の助手もしている。助手の手当は、たぶん先生のポケットマネーから出ていて、経費で申告しているとは絶対に思えない。助手の手当てを計上しなければ、年に20万円の収入には至らない……それでも申告する?

このような場合、迷う気持ちはよく分かります。しかし、この場所で私が言えることは、「決まり通りにやりましょうよ」ということだけです。
ただ、上記のような場合、申告をしたくない気持ちは、「所得をごまかしたい」のではなく、「面倒な作業を回避したい」のが主だと思います。納税金額が多くない場合、申告せずにいて、後でそれが注意を受けても、
「こんなものも所得になるんですね、知りませんでした」
で、修正申告すれば、大事にはならないのかもしれません……が、あくまでもルールを守って納税しましょう。

レッスン料は、何所得?

花のレッスンをして、その対価として得る金額が何所得になるのかと言うと、実は一様ではありません。

分かりやすいところから行きますと、組織・法人などから、明確に「給与」として出されたものであれば、給与所得です。明細や源泉徴収票に「給与」となっていたら、迷わず給与所得に分類して良いです。

花の先生が給与かどうか迷うのは、「謝礼」や「お車代」のような名目でお金をもらっている場合です。
例えば、月10万円の報酬で、会社稽古を持っているとします。毎月、「お礼」と書いた封筒を、「今月もありがとうございました(+お辞儀)」という風に渡されるとすると、これは何所得なのでしょうか。
額面通りに受け取ると、それは「謝礼」です。
しかし、たまにこれが「給与」である場合があります。会社の会計上、給与の支払いとなっている(つまり、会社と先生の間に雇用関係があるということです)、しかし、お稽古ごとの慣習にならい、先生への敬意をもって、封筒の表書きだけ「お礼」にしている、というようなことがあり得ます。会社ならば、源泉徴収票が出て、そこを見れば最終的にはわかるはずなのですが、源泉徴収票を出してくれない組織だと、担当者に聞いてみないと何所得なのか分かりません。でも……私なら、明細や封筒に「給与」の文字が無く、源泉徴収票もくれないなら、「謝礼だと思った」という判断で申告してしまうと思います。

では、「謝礼」だったとしたら何所得になるのかと言うと、事業所得か雑所得になります。どちらにするのかは、金額の大きさと、継続的な収入になっているかどうかで判断されます。
上の例のように、「特定の会社から、毎月10万円、きちんきちんともらっている」のであれば、私なら事業所得で申告すると思います。(この判断、税務署によっても見解が分かれることがあります)
「謝礼」をもらっているレッスンが、事業として継続性が無く、金額も多かったり少なかったり、という状況であれば、雑所得と判断することができます。

どんなものが経費になる?

経費は、税務署によって見解が違うようです。また、経費の使い道・金額が、所得に見合うかどうかも関係あるようです。(専門家でも見解が異なるので、すみませんが断定的に書けません)常識の範囲内、ということも重要です。つまり、誰でも同じようには経費に計上できないということです。

例えば、世界的に有名なフラワーアーティストなら、おそらく新幹線のグリーン車代を経費にできるでしょう。しかし、名もない花の先生である私=管理人なら、経費と認めてくれるわけがありません。
このように、人によって経費になるものは違うのが現実ですが、花の先生の経費として一般的に思いつくものを下に挙げてみます。

◆地代家賃……貸し教室代
◆諸会費……所属組織の会費、免許の維持会費
◆水道光熱費……ガス代、電気代、水道代。貸し教室で「教室レンタル代」とは別に集められていたら全額申告できる。自宅教室の場合、レッスンに使った金額を按分する
◆研究費……書籍代、フラワーショー・花展のチケット代
◆研修費……レッスンやセミナーの料金
◆花展関係費……出品料、花材費、写真撮影代
◆旅費交通費
◆通信費……電話代、ケータイ代。固定電話を使っている場合、花業務に使った金額を按分する
◆交際接待費……業務上必要な相手へのお年賀、お中元、歳暮、冠婚葬祭等に使った金額
◆広告宣伝費……チラシ作成代、ホームページ制作・維持費、教室案内サービスの使用料
◆修繕維持費……貸し教室で修繕費用を請求された場合は、その全額。自宅教室では、教室にかかわる修繕であれば全額、教室と住居両方にかかわる修繕であれば按分が必要
◆消耗品……文房具、ワイヤーやテープなどの花道具
◆振込手数料

スタッフを雇っている場合には、以下のものも加わります。

◆給与手当……スタッフ給料
◆福利厚生費……スタッフ食事代
◆雑給……スタッフ交通費

自分の楽しみのために使った金額も経費になるのか

経費を出すときに、真面目な人ほど迷うのが、
「自分の楽しみのための支出を、経費にするのは許されるのか」
というところです。

例えば、あこがれのフラワーアーティストのショーを見たチケット代や、毎年楽しみにしている所属スクールの新年会の会費や、欲しくて仕方なくて買った花器の代金など、「仕事のため」という意識をほとんど持たず、自分の欲望を満たすために使ったお金を経費に計上してもいいのか、ということです。

こういうものは、税理士さんや税務署に聞いてみても、見解が分かれるような事柄に当たります。
それならば、自分が「事業につながるお金の使い方だ」と人前で言える内容であれば、すべて経費にしていいのではないでしょうか。
最終的に、経費としてふさわしくないとされたら、正式な筋から「認めません」と言われるので、その時に「分かりました」と引き下がれば済むことです。

本人がはっきりと
「これは明らかに経費では通らない」
「これが経費ですと人前で言うのは気が引ける」
と思うなら、それは経費にしない方が良いです。
経費で良いのかな?ダメなのかな?と思うなら、基本的には「経費にして提出してみる」と考えましょう。

個人の見解を書きます

※完全に個人の見解を書きますので、参考にされるかどうかは自己責任でお願いします

私は確定申告書については、
(誠実に納税する気持ちを持っていることを大前提にして)所得や経費の分類は、最も自分に有利(金銭的に有利だけでなく、手間の上の有利も含む)になる解釈でしてよい。自分の解釈にふさわしくない部分があれば、税務署が指摘してくれるので、指摘されてから改めればよい」
と考えています。

悪いことをして税金をごまかしてやろうと、ウソの申告をするのは論外です。しかし、誠実な人がちょっと分類を誤ったくらいなら、「違ってますよ」と言われるだけです。迷ったら、「より自分に有利な方を選べ」で、私はやっています。

 

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