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葬儀・祭壇装花の仕事


葬儀・祭壇装花の仕事

葬儀用・祭壇用の装花を作る仕事とは

お葬式の装飾をしたり、式に使用される花を用意する仕事も花業界にはあります。お葬式に花屋の存在は重要です。

葬儀用花を専門的に請け負っている花屋さんは結構あります。また、普通の花屋よりずっと大きな「生花部門」を持っている葬儀社もあります。そういうところに勤めると、斎場や店の奥で主に白い花ばかり扱っていることになります(最近は、なかなかカラフルな花も扱いますが)。

葬儀の花だけで成り立つ仕事があるということは、要するに葬儀はお金になるのです。なので、そのための技術者も求められます。

最初から、「自分は葬儀専門の職人になろう」という思いで花業界に入ってくる人は、あまりいません(結婚式を専門にやりたいと思って入ってくる人はかなりいます)。しかし、葬儀花は巨大装飾を作る腕を振るえますし、「心をこめて仕事をしたい」と考えている人には、打ち込む価値のある仕事です。
お葬式関係の仕事は縁起が悪い……と考える人には明確に向かない仕事ですので、そういう方はやめた方が良いでしょうが、その論法で「結婚式の花業務よりも、お葬式の花業務のほうが一歩劣る」と考えるのは、明らかに間違っています。

この記事では、お葬式のスタイル別にどんな花が使われるのか、葬儀花の仕事を得るにはどうするのか、最近の葬儀花の傾向などの情報を紹介します。

 

 

葬儀の花は、具体的にどんなものを作るのか:無宗教・仏教・キリスト教・神道の場合

無宗教

どの宗教でもない「無宗教」は決まりごとが少なく、「何が必要」と決めつけることはできません。下に挙げたものは、用意されることが多い(かなり一般的、と言って良い)ものです。

◆祭壇の花……祭壇を囲むように花をセットします。祭壇花の作成の経験が無くても、フラワーアレンジメントを作りなれている人なら、人のやり方を見ればすぐ吸収できると思います
◆アレンジ数点……白を基調とした、お葬式らしいアレンジメントが1点から数点置かれることがあります。一般的な「お供えアレンジ」が作れる人なら大丈夫です
◆献花用切花……ただの切花を用意するだけなので、花屋さんの手間はほぼありません。切りそろえてトレイなどに入れておくだけです

仏教

◆祭壇製作……祭壇を囲むように花をセットします。祭壇花の作成の経験が無くても、フラワーアレンジメントを作りなれている人なら、人のやり方を見ればすぐ吸収できると思います。「仏」は、最もオーダーの多いスタイルなので、花をセットしやすい枠が用意されていることがあり、最も簡単な場合は決まった場所に花を挿していくだけで済みます

◆お別れの花……棺を閉める前に、お別れに入れる花です。花祭壇の花が使われることもあります。花屋さんの準備としては、花を短く切りそろえておくだけです

キリスト教

◆祭壇の花……祭壇を囲むように花をセットします。祭壇花作成の経験が無くても、フラワーアレンジメントを作りなれている人なら、人のやり方を見ればすぐ吸収できると思います

◆アレンジ数点(無い場合もあります)……白を基調とした、お葬式らしいアレンジメントが1点から数点置かれることがあります。一般的な「お供えアレンジ」が作れる人なら大丈夫です

◆献花用切花……ただの切花を用意するだけなので、花屋さんの手間はほぼありません。切りそろえてトレイなどに入れておくだけです

神道

◆大榊……枝榊で製作します(これは、管理人自身が作ったことが無いので解説できません)

◆玉串・大幣……榊の枝に紙垂を付けるだけ

◆祭壇の花……祭壇を囲むように花をセットします。祭壇花作成の経験が無くても、フラワーアレンジメントを作りなれている人なら、人のやり方を見ればすぐ吸収できると思います

作る側から見ると……

(葬儀のお花の「作る喜び」を語るのは、非常に不謹慎かもしれませんが、お許しください)

職人が喜んで作りたがるのは、自由がきく「無宗教」と「キリスト教」です。
神道は、「とりあえず、一回経験したい」という人が多いです。
「仏」は、不人気ではないのですが、絶対に数多く受けることになるので、「面白い」「やってみたい」と思う対象ではなくなります。ただし、数が多いだけに、いろいろなお客さんと出会うので、たまにびっくりするような高額オーダーや、聞いたことも無いような個性的な内容のオーダーを受けることがあります。


 

 

祭壇アレンジは、意外にも個性が求められる

祭壇の花は、「決まった形を機械的に作るだけ」と思っている人が多いと思いますし、実際にそういう場合も多いです。しかし、意外にも、「人と違った風にしたい」というオーダーも多いのです。

たとえば、
「故人は音楽が好きだったので、音楽をモチーフにして作ってくれ」
「登山が趣味なので、富士山の形に花を作って欲しい」
「辛気臭いのがキライな人だったので、ピンクと黄色を主にして欲しい」
など、いろいろなことを言われます。最近は、故人が生前に「こういう祭壇にしたい」と明確に指示した遺言を遺している場合もあり、いっそ結婚式よりも個性的ではないかと思うくらいです。

というわけで、「葬儀は決まりきっていて、創意工夫の余地は無い」と思うのは間違いです。また、個性的な葬儀花は、結婚式に負けないくらい、
「良い式になった。ありがとう」
と言われることもあるのです。


 

 

葬儀の花は、白い花だけではない

数十年前は、葬儀のお花の一部にでもピンクが入っていたりしたら、「非常識」と言う人もいました。しかし、最近のお葬式は、白一色である方が珍しいと思います。また、昔はよくあった「菊と鉄砲ユリだけ」というのもほぼ無くなり、大体何らかの洋花が入っています。

お供え花でもそうなのですが、これは一般の意識が変わってきた結果です。お供え花をオーダーする人と話をすると、
「菊だけではかわいそうだ」
「薄いピンクくらい入れてほしい。そのほうがキレイだから」
などと言われることが多いのです。
少しくらい華やかにしないと、故人もがっかりするのではないか、という思いが感じられます。特に、幼い女の子や、若い女性が亡くなったような場合には、
「菊じゃないほうがあの子に似合う」
と言われる方がいます。完全に、その花束を故人がかかえている姿を想像しての言葉だと思います。

そのような意識が一般的である今日では、祭壇の花に赤のグロリオーサくらいは普通に使われます(もちろん、全面的に赤にはしません)。胡蝶蘭も、昔は白一色ばかりで、リップがピンクのものすら避けられましたが、最近では全てピンクの胡蝶蘭もタブーではありません。思いのほか、葬儀の花の世界は華やかなのです。

胡蝶蘭の話をもう少ししますと、胡蝶蘭をたくさん使う仕事がしたいなら、葬儀装花の仕事はおすすめです。結婚式よりも、葬儀の方が胡蝶蘭の消費は多いと思います。


 

 

葬儀の花を仕事にするなら

葬儀場の近所には、「この花屋が葬儀の花を請け負っているな」とわかる店が意外に簡単に見つかることがあります。祭壇花の用意や始末をしているのは、外から見えるところでやっていればすぐにわかるからです。そのような店に、「スタッフ募集」と貼紙がしてあったら、応募してみるのも一つの方法です。葬儀花屋は、一般の花屋ほどの人気職ではないので、意外にその場で採用になることもあるかもしれません。

ネットで探すなら以下のようなサイトを見てみると、大体どんな仕事があるのか、報酬はどの程度かということがリサーチできるかと思います。

シゴトinバイト 生花 祭壇……常時、葬儀花屋の求人があります
バイトEX 生花 祭壇 ……常時、葬儀関連花業務の仕事があります

「葬儀関係」の仕事の中には、それが「葬儀関係」であるがゆえに(人が嫌がる仕事であるがゆえに)、一般の職よりも報酬が高いものがあります。しかし、私が今まで見た限りでは、葬儀の花の仕事の給料が、花屋として割高であるとは思えません。一般的な花屋スタッフと同程度ではないかと思います。
ただし、売り上げの良い葬儀花屋や葬儀社は、儲けをスタッフに還元していることも大いにあります。特に、地方では、一社がその地の葬儀を独占している場合もありますので、そのような企業に勤めれば高給が取れることもあるでしょう。


 

 

「経験者」でなくても葬儀装花の仕事につけるのか

葬儀生花のスタッフも、経験者が求められることが多いです。生花店勤務の経験があれば「経験者」とみなされますので、祭壇を作った経験が無くても大丈夫なことが多いと思います。
祭壇を作る仕事は、大きめなアレンジ、少なくとも段花を作れるくらいの経験者だと飲み込みが早くてよいのですが、アレンジが普通に作れる人なら、できるようになるまでの道のりは、それほど遠くはありません。

花屋の経験がまったく無い人が、「経験なしOK」の仕事に応募するときには、「熱意があります」「働き者です」ということをアピールすると良いです。葬儀の仕事は、「運ぶ」「組み立てる」「解体する」などの作業が多いので、動くことを億劫がるような人は喜ばれません。

採用されたら、最初は白菊の葉っぱ取りなど、単純作業からすることになると思いますが、それをつまらない仕事だと思うようならやめた方が良いです。単純な作業を、いかに効率よく、美しく仕上げるかを追求するような人が、大きな仕事を任されていきます。

 

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